描画〜仕上げ

下描きが終わってフィキサチーフで固定したら、次からはいよいよ油絵の具を乗せていきます。
絵の具はたくさんの種類がありますが、私がよく使う色を紹介します。
メーカーは全てクサカベです。

●赤系

カドミウムレッド
ローズマダー

●青系

コバルトブルー
ウルトラマリン
セルリアンブルー

●黄系

カドミウムイエロー
カドミウムオレンジ
オーレオリン

●緑系

カドミウムグリーン
テールベルト

●茶系

バーントアンバー
ローアンバー
バーントシェンナ
ローシェンナ
イエローオーカー
イエローオーカーライト

●紫系

コバルトバイオレット

●その他

シルバーホワイト
セラミックホワイト(ホルベイン)
アイボリーブラック
ランプブラック

私は無機顔料系の絵具を好んで使っています。
唯一クサカベだけは絵の具のラベルに無機か有機かの表示があります。
無機顔料は一般的に不透明で堅牢な色が多いです。
無機顔料は、絵具の元になっている顔料が鉱物などから取れているため、
着色ではなく顔料自体が持っている色なので色の褪色が少なく、
粒子の大きさから不透明なものが多い傾向にあります。
有機顔料は植物などから取れた染料を体質顔料という無色の粒子に染め込んで作っている色が多く、
褪色があり粒子径が小さいので透明な色が多いのです。
人工的に合成した色も有機顔料です。
透明の絵具はグレーズという技法で下の色を生かした表現には向いています。
最近では変色しない有機顔料も開発されています。

余談ですが、無機顔料は鉛やカドミウムのような有害物質を使っており、
環境問題が深刻な現代では生産中止に追い込まれる傾向にあります。
ヒ素を使った絵具もありましたが、それは既に生産中止になっています。
科学の発達で無機顔料に近い色を人工的に作れるようになったと言われています。
しかし、混色の都合などで合成した絵具が本当に既存の絵具と同じ役割を果たす事はできないと思います。
有機顔料のメリットは鮮やかな色が多いこと、安いこと、安全なことなどがあります。
他にも少量の混色で色味を出せるというのもありますが、
これは裏を返せば混色の時に他の色を食ってしまうということでもあります。


多くの人は描き出しは絵の具をテレピンで薄めておつゆ描きというのをします。
今回は重厚な画面を作るためにも、ペインティングナイフで一気に絵の具を乗せる事にしました。

●ナイフの使い方
ナイフの使い方は、パレットに絵の具を出して何度かパレット上で練れば、
あとはそれをナイフですくって塗りつけるだけという簡単なものです。
筆よりも絵の具の厚みを作りやすいので下描き段階の大きな作業では役に立ちます。
私の場合は完成に近づくにつれて絵が硬くなる傾向があります。
そうならないように、最初はナイフで下描きをある程度無視して自由に乗せます。

木炭は黒いのですが、まだこの段階では黒を置きません。
上に塗る色の深みを出すために木炭の部分にはカドミウムレッドを乗せました。
ろうそく皿には木炭の赤とは逆にコバルトブルーを乗せました。
木炭の黒には温かみを、ろうそく皿は鉄なので冷たさを出すためです。
床はイエローオーカーとローシェンナの混色です。
壁はローシェンナやバーントアンバーなどを混色しています。

●溶き油について
油絵にはたくさんの溶き油があります。
この溶き油は絵の段階によって使い分けましょう。
絵の具はそのままだと硬くて塗りにくいと思います。
その時に溶き油を使って調節してあげます。

最初はテレピンだけで描きます。
テレピンは揮発性油と言って、乾きの早い油です。
描き出しではこのテレピンを使って素早く色を乗せるとやり易くなります。

しかし、ずっとテレピンだけで溶いていると、いつまで経っても油絵の重厚な画面ができません。
一通り色を置いたら、次からはペインティングオイルを使いましょう。
このペインティングオイルは油絵らしい艶のある重厚な画面を作ります。
ペインティングオイルというのは、先のテレピンに乾性油のリンシードオイル、
そして少量のニスと乾燥剤をあらかじめ調合した油です。
乾性油とは文字通り乾いて固まる油です。
揮発油は揮発してしまうので油のないさらっとした画面になりますが、
乾性油はその場で固まるので油絵らしい艶を残してくれます。
油絵が水彩画などと違う重厚な画面になるのは、この乾性油の効果です。
慣れてくると自分なりの画面を作るために調合したくなりますが、
基本的には市販のペインティングオイルが最適な比率の調合油なので
そのまま使っても問題はありません。
最初は市販のペインティングオイルに1割程度テレピンを加えて使用します。
ある程度全体を描いたらそのままのペインティングオイルで描きます。
仕上げの時はこれにリンシードオイルなどの乾性油を加えて艶を出します。

ペインティンオイルにも種類があります。
普通のペインティングオイルは乾性油がリンシードですが、
スタンドオイルやコーパルを使ったものもあります。
スタンドオイルは古典技法向けで、完成後の変色が少ないのが特徴です。
コーパルも古典向けで、強力な艶と堅牢な画面を作りますが、変色が激しいのが難点です。
他にも様々な油があるので慣れたら試してみるのも面白いと思います。
私は乾性油をスタンドオイル、揮発油をテレピン、乾燥剤をハーレムシッカチーフ、ワニスをダンマル
にして描き出し用、中描き用、仕上げ用の3種類の調合油を作っています。

ここまで描いたら今日は終わりです。
このまま絵の具が乾くまで待ちます。


絵の具の表面が乾いたら続きを描きます。
いよいよ筆を使っての描画です。
筆は主に豚毛を使いました。

筆を使って木炭の陰にランプブラックを乗せます。
この段階で輪郭を取り直しながら描き進めます。
明るい部分はランプブラックにシルバーホワイトとローアンバーを混ぜた色で起こします。
明るい部分は木炭のゴツゴツした表面を表現するために、
ナイフでわざと雑に絵の具を乗せます。

●筆について

筆も絵を左右する重要なポイントです。
メジャーな筆は豚毛の筆です。
コシがあって粘りのある油絵の具にも負けずに描画ができます。
ただ、繊細な絵を描く時には豚毛では表現できない事があります。
最高級のコリンスキーの毛は柔らかく絵の具の含みも良いようですが、
非常に高いのでもったいなくて使えません。
筆は消耗品なので、中位の作品以上なら絵1枚につき2〜3本は
買い換える位の気持ちでもったいぶらずに使いましょう。
柔らかいものなら馬毛やイタチ毛やセーブルなど、筆はたくさんあるので色々使ってみるしかありません。
細い線を描く時には日本画の面相筆がオススメです。

物を立体的に描くためには陰影が重要です。
描き込む段階では左上手前から光が差し込むという事を意識しましょう。
床も木目を意識しながらいくつかの色を使って描きます。
一通り絵の具を置いたら今日の作業は終了です。


前回までのが乾けばもう仕上げになります。
実際の制作期間は5日程でした。
前回の段階まで進めたら、後は細かい部分の修正と描き込みになります。

木炭は複雑な表面をしているので、丁寧に描き込みますが細部にこだわりすぎて
全体の陰影を壊さないように注意しましょう。
木炭は黒ですが、光の当たる部分は思っているよりもかなり明るくなります。
全体の陰影に矛盾が出ない程度に、木炭側面の陰になる部分にも明るい場所を見つけ出します。
下になっている木炭は、ろうそくより左はかなり暗くなります。
逆にろうそくの右側はほとんど黒ではない位に明るく起こしました。
上の木炭の影を落とすことで上の木炭と床の間の空間が見えてきます。

ろうそくは全体の立体感を損なわないように、まずは図柄は無視して白い円柱を描きました。
その絵の具が乾いてから図柄を描き加えます。
柄もろうそくの円柱に沿っている事を意識して、浮いてしまわないように注意します。
陰の部分の柄は一緒に暗くしましょう。

ろうそく皿は鉄なので、ハイライト(白い部分)と皿の色を極端に分けます。
下地が青だったため、木炭よりも冷たい色になっているのが感じられると思います。
使っている黒の絵の具は同じランプブラックです。
アイボリーブラックはカビが生えやすいという問題があるので普段は使用を避けています。
光が当たる部分も白くハイライトが入りますが、
光の反対側にも明るい部分ができます。
これは反射光といって、周りの物が光を反射させるためにできる色です。
この反射光をハイライトよりは鈍い色で描くと回り込む形がうまく表現できます。

壁は絵を描く上で非常に難しい部分です。
壁が壁の位置に収まってくれれば良いのですが、
本来の位置よりも前に出てしまうことがしばしばあります。
壁が奥にいくようにここではかなり色を暗く落としています。

床は木目を追うのも重要ですが、水平な面である事を意識します。
物の影や接地面を丁寧に捉えます。

●仕上げのニスがけ
完成したら半年後にニスをかけてやります。
なぜ半年なのかというと、油絵は表面が乾いていてもその中は完全には乾いていないため、
すぐにニスをかけてしまうと中が乾燥できないままになってしまうのです。
こうなると最悪の場合ガスがたまって絵が黒く変色してしまうことがあります。
油絵の乾燥は水の乾燥とは違います。
水の場合は蒸発することで乾くのですが、
油絵は乾性油が空気中の酸素と結合することで固まります。
この結合には非常に時間がかかるため半年ほど置くということになっています。
実際は2〜3ヶ月程でニスがけしても、今のところ私の絵では問題ありません。

ニスがけにはタブローという油を使います。
柔らかい毛の刷毛で均一に塗布します。
仕上がったらニスをかけてあげた方が油絵らしくなるので、
気づいた頃にでもニスをかけてあげましょう。

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以上で油絵の描き方の紹介は終わりです。
わからないことや相談があれば掲示板やメールで気軽に聞いてください。
画材については後日SHOPでオススメのものを紹介するようにしていきます。

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