3.インディアン・ジュエリーの概要

数ある北アメリカの工芸の中でも、インディアンジュエリーは特に有名である。ここからはインディアンジュエリーについてより深く追求する。

●シルバー
インディアン・ジュエリーの起源はというと、さほど古い話ではない。今からおよそ150年ほど前にさかのぼる。日本の歴史で言えばペリー提督の浦賀来港や、安政の大獄が起こっている辺りになる。それはさておき、1850年代、スペイン人によって銀細工の技術がナバホ族に伝えられた。当時の材料と言えば、メキシコのメソ硬貨とアメリカ銀貨を溶かしたものくらいだったようだ。細工のための道具は拾ってきた金属片程度で、状況はとても恵まれたものではない。そんな悪条件のもとでも、インディアンとシルバーの出会いは彼らのあふれんばかりの独創性に火をつけ、みごとな作品へと結実した。ナバホ族からズニ族へ、ズニ族からホピ族へと銀細工の技術は土に水が染み込むように自然に伝わっていく。

●ターコイズ
インディアン・ジュエリーにターコイズが用いられるようになったのは1890年代末のことだったが、アメリカ南西部におけるターコイズの歴史はかなり古く、少なく見積もっても1200年前、つまり西暦700年、あるいはそれ以前にまで遡るとも言われる。当時採掘されていたターコイズはニューメキシコ州からトルコを経由し、別名「トルコ石」と姿を変え、海の向こうに運ばれていった。皮肉なことにヨーロッパ人が新大陸の存在を知るずっと以前のことである。ターコイズはその色が水と空を連想させることから宗教儀式に欠かせない存在であると同時に、社会的地位を示すものであったようだ。残念なことに、「空の神」と呼ばれたターコイズは現在ではほとんど採掘し尽くされ、小規模な鉱山がちらほら残っているのみである。現在はほとんどが中国からの輸入品でまかなわれているそうだ。

●現代のインディアン・ジュエリー
時代が変わると、古きものから逸脱したいという欲求も否応なく高まるものである。第二次世界大戦直後、名高きホピ族のアーティスト、チャールズ・ロロマとプレストン・モノンガイが先駆けとなり、昔ながらのスタイルと決別を唱える「コンテンポラリー・ジュエリー」が生み出された。ロロマの作品は伝統を題材にしてはいるものの、そのフォルムや絵画のような色使いはそれまでに無いものであった。70年代半ばまでに多くの革新的な技法が登場するようになり、素材も多様化した。ターコイズやサンゴ以外に南米産のブラックオニキス、アフガニスタン産のラピスラズリ、アフリカ産のマラカイト、オーストラリア産のオパール、メキシコ産の真珠など、今や新顔の石は毎年のように登場する風だ。ベースの鉱物にしても、ゴールドやプラチナなどが織り交ぜられるようになり、コントラストをひきたてるのにも一役買っている。完成された伝統美とアーティスト達のほとばしる感性の奔流が激しく押し寄せる、すべてがインディアン・ジュエリーの魅力だ。


1.北アメリカ

2.インディアン

3.シルバージュエリー

4.種族と技法
5.素材になる石

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